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『ヨコハマ恐竜展2014 ~新説・恐竜の成長~』、内覧会。 [恐竜・古生物]

本日2014年7月16日から8月28日まで『ヨコハマ恐竜展2014 ~新説・恐竜の成長~』が始まった。
同会場パシフィコ横浜では、一昨年『ヨコハマ恐竜展2012 ~福井恐竜博物館コレクション~』を行い、昨年は恐竜ではなく『特別展マンモスYUKA』が開催されていた。
今年は再び恐竜ということになり、モンタナ州立大学付属ロッキー博物館のご協力のもと、恐竜の成長を主軸とした恐竜展が開催される

私は昨日、恐竜おもちゃの博物館 館長のご厚意により内覧会へ参加。
17時から開会式が行われ実行委員長の挨拶のあと、監修者であるジャック・ホーナー氏による20分程度の講演が行われた。

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・ホーナー氏の古生物学者としての始まり
・子育て恐竜を発掘できたのは幸運であった(マイアサウラ)
・恐竜が科学的に注目されはじめたのは、鳥の祖先とわかってから
・恐竜が鳥のように子育てするなら、大人が子供を、子供が大人を見た目で判別できる能力はある
・今まで別種とされていた恐竜のいくつかは、成長段階の違いだったかもしれない
・よって今回の展示は、恐竜の成長をメインに展示した

上記のような流れであった。
通訳がいたとはいえ、実に日本人向けのゆっくりした英語で講演してくれて、私のような英語が不得手な人間でも十分に聞き取れた。講演の間に挟まれるちょっとした英語の小話で笑ってしまったのは、間違いなく初である。

さて、今回は内覧会の模様を紹介する記事である。
諸説について私の意見・見解、または他の学説や主張を挟まず、「ホーナー氏の考え」をお楽しみ頂きたい。

恐竜の成長といえば、2010年にモンタナ州立大学の研究グループによる「トロサウルス=成長したトリケラトプス」という同属説の発表が恐竜ファンの間を飛び交ったのがご存じだろうか。
一部では「トリケラトプスの名前が消える!?」と書かれたweb記事もあったが、命名の先取権によりトリケラトプスが優先され、仮に名前が消えるのならばトロサウルスである。
現状あくまで一説であり、大きな支持を得ているわけではない。けれど一説が支持され固められ、通説になっていくこともある。
そして今回の恐竜展、最初に展示されているのはトリケラトプスの成長である。

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ホーナー氏の講演のあとは、彼の解説付きで展示を観覧する時間となった。
「トリケラトプスの子供は多く発見されているのに、トロサウルスの幼体は誰もみたことがないのです」
という説明のもと、成長段階ごとにならんだトリケラトプス7つの頭骨。
一般的な博物館ではトリケラトプスが展示されているとしても1体であり、頭骨だけとはいえ成長段階ごとに見られるのはなかなかない。年を重ねるごとに角の反り返りは緩くなり、フリルの先(縁後頭骨)が丸くなっていくのがわかる。


このあとカモハシ竜ヒパクロサウルスを挟み、堅頭竜パキケファロサウルス。
学名表記が『Pachycephalosaurus』であり、英語圏では「パキケフォロサウルス」と発音するためか、通訳の方がつられて「パキケフォロサウルス」と何度も口にしていた。恐竜あるあるの定番であろう。

先ほどの「子供トリケラトプス→トリケラトプス→トロサウルス」という成長段階に対し、
今回は「ドラコレックス→スティゴモロク→パキケファロサウルス」と成長していったという発想の展示である。

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(内覧会での写真がブレていたため、代用として2011年に別の会場で撮影したものを1枚使用)
ご覧の通り、ドラコレックスやスティゴモロクは後頭部に2本の大きな角がある。疑問に思って当然である。角に関しては(ホーナー氏が書いたものではないが)現生のチョウザメを使って説明した論文があるので参考にして欲しいとのこと。


締めくくりは、ティラノサウルス。
かつてはナノティラノスと呼ばれていた小型ティラノサウルスや、最大級とされるMOR.008標本など合計4つの頭骨が展示されている。
MOR.008は頭骨の部分化石しか発掘されていないがスーよりも大きく、スーやMOR.008 のような成長した大型は骨ごと食べるスカベンジャー(腐肉食)であるとホーナー氏は説明した。

 

・愛称B-レックスと幼体ティラノサウルス・レックス(ナノティラヌス)

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・MOR.008

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・MOR.555(ワンケル)

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ティラノサウルス全身骨格はMOR.555標本がベースである。
MOR.555の頭骨は、下顎を除いた頭骨の上半分がほとんど見つかっている素晴らしい頭骨といえよう。鼻骨から口の尖端にかけても発見されていないので、そこを含めて判別できるように頭骨レプリカは作られている。

 

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メイン展示の最後は、ティラノサウルスの可動式復元。
例え体長が骨格と同等であろうと、肉がつくとより巨大に見える。復元ロボットを見ながら、ホーナー氏はおっしゃった。
「前肢がとても小さいでしょう? これは大して役に立たなかったんだ。もしティラノサウルスが絶滅せずあと100万年生きていたら、この前肢はなくなっていたかもね」と。

メイン展示が終わってみると、会場スペースの割に実骨や小物の展示はいささか少ない。言い換えれば空間を贅沢につかった大物が多く、視覚的に圧倒される。
また、ティラノサウルスに限らず今回はロボットが多い。メイン展示のあとも恐竜をつかった遊具もあり、アミューズメント要素が高い恐竜展となっているといえよう。2つの視点からみると、お子様が飽きにくいようになっているのではなかろうか。

さて、最後まで読んだ頂いた方々のなかに、このように疑問を思った方がいるだろう。
「福井恐竜博物館の2011年夏にあった特別展と一緒じゃ?」
「大阪市立自然史博物館で2012年春にもあったよね?」
まさにその通りである。巡回展と思っていただきたい。
3年前の福井となると私も少し記憶が曖昧になり展示物すべてを明確に覚えてはいないが、諸説を後押しするような骨追加らしい追加の骨格標本はないはずである。大阪のときにあったヒパクロサウルスの全身骨格も今回はない。
「福井から3年、大阪からも2年も経ったし、もう一度みてみたい」という方は是非とも足を運んでいただいて頂きたい。


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国立科学博物館、『太古の哺乳類展』プレス・内覧会。 [恐竜・古生物]

目玉はナウマンゾウの親子3体。
「日本を代表する絶滅哺乳類といえば彼らしかいない!」、というのも納得である。
知名度もあれば、発掘された量も多い。日本各地で見つかっている。

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ホール中央に展示されている3体は、もちろん父・母・子のように展示されているだけであり、実際の親子ではない。現生のアフリカゾウは、父親が子供と一緒に長く行動することもない。
だが、この3匹は間違いなく日本を歩いていた。注目すべきは発掘場所である。

東京都中央区の浜町駅で発掘された、母ナウマン(左)。
千葉県藤沢市や下総町そして渋谷区で発掘された牙を組み合わせてつくられた、父ナウマン(右)。
ちょっと離れて北九州市で発掘された、子ナウマンの頭骨(中央)。
他にも上野からすぐ近くである、台東区稲荷町で見つかった大きな牙なども展示されている。

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さて、目玉を先に紹介したが「なんの話だ?」と思われた方もいるかもしれない。
本日2014年7月12日から10月5日まで国立科学博物館(通称:科博)にて開催されている『太古の哺乳類展 –日本の化石でたどる進化と絶滅-』。その前日プレス・内覧会について紹介しよう。

開会式の模様と、サポーターである山田五郎氏の就任式。大腿骨の授与。

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山田五郎氏の右側は、監修者である富田幸光先生(国立科学博物館 地学研究部長)である。
富田氏の長年に渡るの功績と人望により、全国津々浦々の博物館から哺乳類たちが集結している。日本から発掘された化石たちばかりで行われる大規模な絶滅哺乳類展というのは、今回が初であろう。

デスモスチルスやパレオパラドキシアといった束柱類の話もしたいが、

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惜しいけれど次回にしよう。
さきほどナウマンゾウの話をしたので、引き続きゾウ類のことを。

ナウマンゾウは絶滅ゾウのなかでも、わりと最近まで生存していた。
約2万年前の氷期ピーク頃から絶滅に踏み出していると考えられている。たしかにこれでは、太古という言葉を使うには新しい気がしてしまう。
ゾウの中でも古い地層から発見された、ゴンフォテリウムの話をしよう。
ナウマンゾウやケナガマンモスと比べて知名度は劣るであろうが、『海洋堂特製フィギュアストラップ ガチャガチャ』の4属のうちの1つに選ばれている。


ゴンフォテリウム科は(諸説あれど)2000万年前に誕生したと考えられている。
その中で今回展示されているゴンフォテリウム・アネクテンスは岐阜県可児市で発見されたもの。

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ナウマンゾウや現生ゾウと比べて、あごが大きく突き出しているのがわかるだろう。牙も上の歯だけでなく下顎の尖端からも生えている。太古のゾウ類にはゴンフォテリウムの他にプラティベロドンなど下顎が出ているものも多く、ゾウはゾウでも現生のイメージとは随分と姿形が違うもの。

ゴンフォテリウムは頭骨のレプリカが、科博の未来館に常設展示されている。
『太古の哺乳類展』にある部分頭骨(上顎)と下顎は、実骨である。しかも上と下は同一個体のものと考えられている。

しかし上下がセットとなって同時に発見されたというわけではない。
上顎が1913年、下顎が1924年に発見されている(詳細な資料ではないので正確な年数ではないかもしれないのでご了承ください)。
発掘現場が同じであり、歯の磨り減り具合も近いことから、同一個体である可能性が高い。

又、時期や発見者が違うので、保存されている機関も異なっている。
上顎が瑞浪市化石博物館、下顎が京都大学総合博物館の所蔵。長いこと離ればなれであった。
今回の展覧会により、上と下の歯が一緒になるのはおそらく50年以上ぶり。さぞ再会を噛みしめ合っただろう。

展示されているゴンフォテリウムの化石はもろいため、哺乳類展のあと上下の実骨が一緒に見られるのは、今後もうないかもしれない。贅沢な再会を見所の1つとして、是非とも『太古の哺乳類展』を楽しんで頂きたい。

今回はゾウが中心となったが、
他にも見所として、さきほど少しだけ話題にした束柱類や、日本で発見されたトラの頭骨化石などがある。
今を逃すとまた全国各地の家に戻ってしまいので、集約している今こそ「太古の日本を闊歩していた陸上哺乳類」を体感して頂きたい。



・おまけ

古生物を中心とした造形作家である徳川広和さんと、今回展示されている作品。
この他にも徳川さんがお造りになったザイサンアミノドンには奥歯もあるので、是非とも下から覗き込んで見て欲しい。

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そのザイサンアミノドンを徳川さんだけでなく、ヒサ先生や真鍋先生らが囲むというレアショット。
恐竜でなく哺乳類をというのが、レアリティが増して面白い。

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お土産コーナーには徳川さんが造形を手がけたFavorite社の新作フィギュア、ケナガマンモスとスミロドンも販売しています。ケナガマンモスの足を裏側からみると、前後で形が違うのがポイント。
http://www.f-favorite.net/SHOP/982789/982796/list.html


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埼玉県立 自然の博物館、恐竜時代 ~海と陸の支配者たち~ [恐竜・古生物]

2014年6月14日のこと。
連日の大雨が一休みをしてくれた、梅雨の休日。

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私は熊谷駅からSLパレオエクスプレスに乗車し、パレオエクスプレスという名の由来と関係のある施設へと向かっていた。
目的の駅に近づくと、車窓から川がみえはじめる。
降車して川辺につくと、眼前に広がる岩畳。

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埼玉県、長瀞。
ここから歩いて少しのところにある『埼玉県立 自然の博物館』が、本日の会場である。


先ほど話題にしたSLパレオエクスプレス。
エクスプレスは鉄道で頻繁に使われる言葉なので、ここでは説明を省こう。
ならば、パレオは?
もちろんパレオにも意味はある。太古の、昔の、など。
命名の意味合いとしては十分に成立するが、パレオエクスプレスはそうではない。パレオというのは、ある絶滅生物の名前から拝借している。
パレオパラドキシア、自然の博物館の目玉展示の1つである。


しかしこの日、いつもよりパレオパラドキシアは控えめな存在であった。
理由は簡単。
『平成26年度特別展 恐竜時代 ~海と陸の支配者たち~』が開催されたばかりであるから。

特別展の命名、私は素直に「うまいな」と思った。
なぜなら恐竜時代(中生代)の展示であり、恐竜展とは銘打っていないからである。

ならば「恐竜なんてほとんど展示していないのか?」と疑問に思うかも知れない。
しかしその疑念は博物館に一歩入った途端、綺麗に解消される。

何を語るでもない。

写真をいくつか見てもらおう。




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アルバートサウルス(実骨)、タルボサウルス、アフロベナトール、ガリミムス。大ガラスから注ぐ日光を浴び、ひときわ目立つマラウィーサウルス。

限られた展示スペースながら通路をうまく活用して展示してある骨格標本たち。
そうなると「恐竜展という名前で良かったのではないか」と思うかもしれない。
しかし……博物館の二階へ行ってみると、

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海の生物たちが待っている。
支配者……というには体は小さい子たちかもしれない。が、実はここだけの話、古生物界隈は2階のが評判がよろしい。目玉ではなく、隠し球といったところか。

この特別展は恐竜だけではないから、恐竜展ではない。
恐竜時代の海と陸を味わう特別展なのである。

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さて、この異常巻きアンモナイト。
ニッポニテスという、日本で発掘されたなかではアイドル的な存在である。
ニッポニテスと日本の名前を冠しているだけあり、日本古生物学会のトップページを飾るくらいの人気者。
色々な絶滅生物の名前や姿を一気に覚えるのは大変。
ここは1つ、「あ~、そんなのいたな」くらいにニッポニテスの名前と形を記憶の片隅に収納し、
現物を見て「かわってんな~」なんて思っていただけると幸いです。


さて、自然の博物館の常設展目玉であるパレオパラドキシア。
この日はいつもより頭数が少なかった。そして、いつも展示している子とも違う。
パレオパラドキシア骨格群像模型および実物化石は……上野にいるはず(つづく)。

 

追記:

私が6月14日をチョイスして訪問したのには理由がある。実は贅沢な講演などを含めた、シンポジウム(長瀞恐竜フェスタ)が行われた。
それはまた、別のお話。


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