『海のハンター展 –恵み豊かな地球の未来–』へ [恐竜・古生物]
上野にある国立科学博物館にて、『海のハンター展
–恵み豊かな地球の未来–』が始まりました。会期は2016年7月8日から月日まで。私は一足先に、内覧会へ参加いたしました。
目玉は、ホホジロザメ(ホオジロザメ)の液浸標本。ぶっといホルマリン注射を内臓や筋に注入され、ホルマリン液に入ったホホジロザメは、生前の艶が残っているようにすら見える。背面が灰色や黒っぽく、腹部にかけて白くなる、一般的にイメージしやすいサメの配色である。
しかし新鮮なのは、今のうちだけ。理科室の棚にあるようなホルマリン標本を思い出して頂くと、白っぽいものが多いと思う。このホホジロザメ標本も月日と共に白くなっていくのである。
小さい頃からサメというものを見てきて、あの配色こそ権威のようなサメの象徴と刷り込まれているところがある。サメの生み出す恐怖は、歯や体格というパワーという面から生み出されるものだけではなく、モノトーンの忍び寄る緊迫感もあるだろう。灰色が強く残る公開直後に見られて、震怖を体感できて、実に良かった。
ホホジロザメにしても、他に多くいるサメの標本にしても、口の位置がやや高く飾られている。天井からワイヤーで吊してあるものが多いが、「子供たちがサメに襲われている臨場感」が生まれる高さが意識されている。私のような大人も、童心に戻るように中腰になることで被食者気分が味わえた。
さて、あとは個人的な好みのものを。まずはヒョウアザラシである。ヒール役のように歯をむき出した剥製にされ、一般的なアザラシと一線を画す佇まいある。
日本全国の水族館に様々なアザラシは飼育展示されているが、ヒョウアザラシはどこにもいない。展示されていない理由の1つに「凶暴な肉食性である」、というものを読んだことがある。
映画『南極物語』をご覧になったことがあるだろうか? 南極で生き抜いたタロとジロの物語。映画のなかで、餌を巡ってタロとジロたちが戦ったのが、このヒョウアザラシである。科博にはジロの剥製も展示されており、因縁の対決が再び……と、夢想してしまうものである。
展示の順路としては逆になってしまったが、入口付近には太古の絶滅種も飾られている。現生の海のハンターの理解を深めるため、進化の経緯や比較は役に立つ。
フタバサウルスやダンクルオステウスといった常設展の顔から、カラモプレウスとクラドキクルスの闘争化石というレアなものまで。後者2つは名前だけ聞いてもピンとこない方が多いだろう。絶滅魚類はそこまで詳しくない私も、会場で説明文などをしっかり読ませて頂いた。
『歴史的な相討ち』と銘打たれ、カラモプレウスに食われたクラドキクルスが、カラモプレウスの腹を噛み食い破るというもの。化石と想像図を個々に見てもイメージしにくいが、セットで観覧すると「そういうことなのか……」と理解しやすい。
続いて、翼竜である。ズンガリプテルスの復元標本と、アンハングエラ科のケアラダクティルスの化石。後者の化石は実骨でほぼ全身が残っており、骨の1つ1つから、合計50本程の歯まで、見所が凝縮されている。もし『海のハンター展』でなく『翼竜展』なら、見所の1つとしてピックアップされる程のものであろう。
(なお紹介した絶滅魚竜と翼竜は、北九州市立自然史・歴史博物館いのちのたび博物館の所蔵である。先日科博で行われたスピノサウルス新復元が目玉の恐竜展2016、今夏は北九州で開催されている)
さて、海のハンター展にはペンギンの剥製もいくつか展示されている。そのなか、1千万年前のペンギンであるスフェニスカスも忘れてはならない。複製ながら、全身骨格と産状化石が展示されている。
余談であるが、数年前、「ペンギンの祖先は黒白でなく茶白」だったという記事を読んだことがある。スフェニスカスはいったい黒白だったのか茶白だったのか……茶白のペンギン、想像すると意外とかわいい。
(なお、現世のペンギンでもケープペンギンなど「スファニスカス属」は生活しています)
私の記事で紹介した生物は偏っているが、『海のハンター展』はサメといった軟骨魚類から毒をもった魚、魚を補食する鳥などの剥製が多く展示されている。また、海のハンターとして頂点にいるヒトについても触れられている。
海水浴へ行くよりも気軽に海に触れられる、夏に相応しい特別展であった。
蒲郡市 生命の海科学館 [恐竜・古生物]
内覧会・プレスへ訪れた記事も書いた、国立科学博物館で開催中の『生命大躍進』が10月4日にて終了する。
巡回展であるので、10月17日からは名古屋市科学館にて開催される。
チラシをみると、オパビニアの模型も追加されているようで、オパビニアをキャリアメールのユーザー名として使っている私としては実に気になるものである。
古生物・古脊椎動物といえば、毎年2月と6月末頃に古生物学会の例会が行われる。
今回(2015年6月末)は茨城県つくば市であり、次回(2016年1月末)は京都。
そして愛知県豊橋市の博物館で行われた。
学会などで発表された内容は論文としてまとめる前なので、本人から許可をとらない限りネット掲載は控えるという不文律がある。古生物学会の〝個人的な感想〟はいくらもあるだろうけれど、詳細報告のような内容は(本人以外からは)基本的に見かけないだろう。
私も学会の感想ではなく、前回の古生物学会のあとに立ち寄った『生命の海科学館』について少し思い出しながら紹介しよう。
先ほどと重複するが、『生命大躍進』を観てカンブリア紀の展示が素晴らしいも書いた。生命の海科学館も、負けていない。
愛知県蒲郡市にある生命の海科学館、隕石や化石など通し、海を中心に地球の歴史に触れられる。
正面か入ってすぐのところにはヒゲクジラ(ザトウクジラの仲間?)の化石があり、見上げれば首長竜が空を飛んでいる。
クジラは実骨が綺麗に残っており、関節・肋骨なども綺麗に残っている。ただ1999年に開館してから潮風に触れているせいか、風化が早いようだ。
まだ研究・調査の可能性が大きく残っているほどの一品であり、先日ニュース記事にもなっていたが、研究調査が開始された。
古生物学会の帰りに私が立ち寄ったこの日、ちょうどお二人も標本の事前調査をしにきていたようで、ご挨拶できてよかった。
さて、逆算するとオープン16年程度。
愛知出身である私は、同じ県内でも遠い場所にあったからか開館後しばらくは知らなかった。しかし今では古生物を学べて楽しめる博物館として、愛知を代表するといっていい。
巷ではカンブリア紀の小さなブームが起こる以前から、価値ある博物館がつくられていたのだ。
まず新しいだけあって、タッチボタンとモニターを用いた展示が見やすく……かっこいい。指先で触れるとモニターが切り替わるのはよくあるが、黒を基調としたデザインが好み。
展示内容に戻ると、カンブリア紀のカンブリア生物群だけでなく、エディアカラ生物群もいる。オレノイデス、カナディア、ディッキンソニア、ヨホイア、マーレラ(マルレラ)、そしてアノマロカリス。どこかで聞いたことある名前ではないだろうか。並びに「カンブリア爆発」という言葉も聞いたことがある。カンブリア紀に爆発的に生物が増え、今に続く種類の仲間も誕生し繁栄した、というものだ。最近ではカンブリア紀が一気に新種が増えたのではなく、他の地質年代と同等や少し多い程度であり、「爆発とは言い難い」という説もある。基準を設けるのが難しい問題ではあるが、今後の進展が楽しみな事柄である。
さて、展示終盤にあるイクチオサウルスもレプリカでなはく実骨であり、尾の曲線、手足の骨、それだけでなく消化痕まで綺麗に残っている。
水平でなく垂直に展示してあるので、どの部位も近くでみられる配慮がしてあるのもよい。
色々な博物館でガイドツアーをみてきたが、子供・大人・カップル理由は様々だが途中で離れる人は多い。階を跨ぐガイドツアーとなると、開始と最後で半分以下になることも珍しくない。生命の海科学館では1フロアで完結するとはいえ、老若男女問わず耳を傾け続けられる親しみやすいガイドツアーであった。
愛知の三河地方へいった際には、豊田市自然史博物館と生命の海科学館のコンボをしてみるのをオススメしたい。
おもいがけないTV出演、アウトデラックス [エッセイ・雑記]
フジテレビにて木曜日23:00から放送している『アウトデラックス』に、
恐竜倶楽部のメンバーであり友人である尾形比呂哉さんが出演することになり、
見学・付き添い・荷物持ちにいったのがちょっとだけ前のこと。
TV業界のことは詳しくなく、細かいことを書くと何かに差し支えるかもしれなく心配であり、もろもろの流れや収録風景のことは省こう。
ただ、畳の楽屋にて頂いた牛すじブラックハヤシライス(ケータリング)はとても美味しかった。
それだけで行って良かったと、収録見学前に思うほどであった。
さて、尾形さんが出演した模様が先日7月23日に放送された。
番組の後半が尾形さんの出番であり……最後の最後に「このあと恐竜倶楽部会員がもう1人……」として、私もほんのちょっぴり登場した。
ご覧になった方は分かると思うが、スタッフの「はいオッケーです」の声のあとに姿を現したので、本来の予定にはない僥倖であった。
テレビ、しかもキー局で自分の姿をみるという経験は滅多にないものであり、恥ずかしいながらも温かいものである。
放送中に話題にでた『恐竜倶楽部』 であるが、恐竜好きをいつでも募集している。
NPOでも営利団体でもない、しがらみのない〝倶楽部〟なので質問があれば気軽に問い合わせてくれていい。
在庫は少なくなりつつあるが、加入すると番組中にも登場した『恐竜倶楽部 創立25周年記念』の品である手ぬぐいがもらえる。
最後になるが、
「本物の尾形さんに会いたい!」
という方は、幕張メッセにて開催中の『メガ恐竜展』 へ足を運んでみるといい。
尾形比呂哉さんが恐竜博士として活躍中である。
ちなみに私も恐竜骨格の組立などに、少々携わっている。
ダイノワールド2015、初日訪問 [恐竜・古生物]
メガ恐竜展が竜脚類などの巨大脊椎動物が多いなら、ダイノワールド2015は獣脚類がメインといえる。
特にアロサウルスは復元・産状・ロボットをあわせて何体いたのかわからない。
趣旨が違うとは言え、昨年のヨコハマ恐竜展2014の倍以上の全身骨格はあるだろう。
まず入ってすぐには、タニコラグレウス(左下)VSケラトサウルス(右上)の懐かしい闘争化石。『世界の巨大恐竜博2006』で観て以来なので9年ぶり。あのときより、2匹の距離が近い。
・タニコラグレウス(Tanycolagreus)
・ケラトサウルス(Ceratosaurus)
続いて、アロサウルスの産状化石をアロサウルスが見つめるというもの。
普通は頭の向きを同じにして並べるのですが、あえて今回のような展示にするような趣向、私は好きである。
・アロサウルス(Allosaurus)
その後、一部に値札がついたままの三葉虫やアンモナイトを経て、
新種と思われているモササウルスの全身骨格。
・モササウルス(Mosasaurus)
このモササウルスに限ったことではないのだけれど、どの部位が発見され、どこを実骨展示しているのかが不明瞭なものが多い。だからこそ、目をこらして探す楽しみもある。そうしてもらうかのように、キャプションに望遠レンズが設置してあるものもあるくらいである。
・ガルゴイレオサウルスの頭骨(Gargoyleosaurus)
・マジュンガサウルス(Majungasaurus)
レアものであるガルゴイレオサウルスの頭骨などをはさみ、今回の2枚看板の1つである。1998年にサウスダコタ州北西部にて発見されたティラノサウルス・レックスの亜成体、通称〝ティンカー〟である。図録が販売されていないので実骨部位などの情報がないけれど、現地では360度観察することができる。メインの恐竜をグルっと一周できるようにしてあるのは意外と少なく、実に嬉しいつくりである。
・ティラノサウルスのティンカー (Tyrannosaurus "Tinker" )
標本展示スペースとしては最後になる、トルボサウルスがいるゾーン。
他にもティプロドクスとして最初に発見された種であるロングス種、アロサウルス・フラギリス、ケラトサウルス、カンプトサウルス、大小様々な標本があり、見所も多い。
・トルボサウルス(Torvosaurus)
・ディプロドクス・ロングス(Diplodocus longus)
・カンプトサウルス(Camptosaurus)
・アロサウルスの大腿骨(Allosaurus)
設営などの準備が追いついていないのか図録や音声ガイドはないものの、
統一感よりも様々な恐竜を詰め込むことが重視された恐竜展であった。その上、大胆にも実骨を飾っている展示も多いようなので、驚いてしまう。
キャプションや解説が少ないのは残念であれ、その反面で局地的に人がたまって渋滞になることもなく、全体として見やすい恐竜展であった。
冒頭にも書いたがティラノやアロなどの獣脚類が多めであり、獣脚類が好きな方も多いだろう。私もそうだ。
そもそも、そもそもだ。
こんなことを言っては申し訳ないが、諸々な目や耳にする事情から今年のヨコハマ恐竜博には期待していなかった。だが、展示点数やレア度からしても、初日に訪問してよかったと実に満足している。
メガ恐竜展2015、はじまる。 [恐竜・古生物]
2015年7月18日(土)から幕張メッセで『メガ恐竜展 ―巨大化の謎にせまる』が開催され、前日である17日には内覧会・プレスが行われた。
メガ恐竜展という言葉からイメージされる通り、巨大の代名詞である竜脚類が多い。
有名どころであるディプロドクスやアマルガサウルスの全身骨格、
日本産であるタンバティタニスやフクイティタンの実骨、
日本初公開であるトゥリアサウルスやエウロパサウルスなどなど。
トゥリアサウルスは上半身だけの復元であるが、全身等身大イラストが飾られている。
そして、その近くにエウロパサウルス。
このエウロパサウルスというのは小さくなるほうの島嶼化(とうしょうか)として名高い。
島嶼化を簡単に説明すると、「島などの孤立した環境では巨大化・矮化する種があらわれる」というものだ。
巨大化があるなら、矮化もある。ここも抑えているのが、「メガ恐竜展」の素晴らしいところである。
また竜脚類だけでなく、ゾウ科のメガ種コウガゾウ(Stegodon huanghoensis)とミニ種ファルコナーゾウも展示され哺乳類の島嶼化も比較できる。ファルコナーゾウに関して膝下くらいのゾウなので、一瞬見落としそうである。
メガサイズというわけではないが日本初公開として、記載当時の2年ほど前にネット上で話題になったライスロナクスも目玉の一つであろう。
話題を呼んだのはやはり「流血王」と和訳され広まった学名によるところが大きいであろうが、ティラノサウルス類としては程ほどの大きさである。タルボやユティランヌスといった大型か、ラプトレックスやグランロンといった小型のティラノサウルス科が注目を集めやすいだけに、実骨も多く見つかっているライスロナクスの中間派としてのスタイルも意外と珍しいかもしれない。
さて、個人的に感動したのがトバリュウの実骨である。
ここからは思い出話になるが……
トバリュウというのは1996年に三重県の鳥羽市で発見された竜脚類である。属種などは判明していないが、ティタノサウルス類であるとされている。
しかし、以前はマメンチサウルス類とされていた。そう、私が子供の頃は。
当時の私は愛知県に住んでおり、隣の三重県で恐竜展化石が発見されたというのは、子供ながらに大衝撃であった。トバリュウの一般向け発表があったとき、父親に頼んで(詳しい場所は忘れてしまったが)三重県まで自動車に乗せていってもらった記憶がある。そのとき、トバリュウの実骨を初めてみた。
それから、実に20年ちかい月日を経ての再会である。
長く恐竜を愛でているからこその感慨深いものであった。
メガ恐竜展、8月30日の会期終了までにあと2回ほど行く予定である。
恐竜博士である尾形比呂哉さんの解説も、是非ゆっくり聞きたい。
『生命大躍進』、プレス内覧会 [恐竜・古生物]
上野の国立科学博物館にて本日2015年7月7日から特別展『生命大躍進 脊椎動物のたどった道』が開幕した。
初日前日にプレス・内覧会が開かれ、私は一足先に拝覧へ。
展覧会の副題は「脊椎動物のたどった道」である。
展示は特定の生物群や時代を中心にしたものではなく、脊椎動物たちの進化順に観ていくもの。
しかし会場に入ってすぐ多くの人が思ったことであろう、「カンブリアすっご!」と。
カンブリア紀というと、おもにバージェス頁岩と澄江(チェンジャン)の動物群である。有名なアノマロカリスなどが生息していた地質時代である。脊椎動物は誕生前であるが、ピカイアなど脊椎動物へ近づきつつある生物がうまれた。
しかし多くは脊椎動物とは関係のない生き物ばかり。「脊椎動物のたどった道」だが、脊椎動物でないカンブリア生物の展示も非常に充実している。開幕から楽しくなる展開だ。
入口付近であり小物が多いため、非常に混雑が予測されるスポットであるが、現代の感覚では奇天烈にみえる生物たちを1匹1匹見比べてみて欲しい。
・アノマロカリス / Anomalocaris canadensis
・ウィワクシア / Wiwaxia corrugat
私はというと、カンブリア生物ではオパビニアが好きである。メールアドレスに使用するほど好きなのである。事前に決めていたわけでもないのに、会場に入って早々オパビニア捜索をしていた。
ボディはややアノマロカリスに似ていて、かぎ爪の付いた長いノズル構造の触手(風のもの)、極めつけに5つ目という生物である。
特徴が多いだけにカンブリア内知名度の高いが、発見数は少ない。レプリカ標本は安価でよくみかけるが、実物を観たことはなかった。
「展示していない可能性がある」ことを考慮しつつも、期待に胸を膨らませ順路を進むと、バージェス頁岩の中間地点ほど、いたのである。
さて……、こちらがオパビニアの実物化石である。
・ オパビニア / Opabinia regalis
改めて写真を見直して思う。写真だと、実物とレプリカによる感動の違いは大差ない。
その上、いつも観ているレプリカとは違う標本。細長いノズルはわかりにくいが、瞳はハッキリしている。
内覧会で実物をゆっくり観覧できてよかった……。また観に行こう。
さて、次の時代へ移ろう。カンブリア紀以後に生まれたウミサソリについて。
陸上のサソリの祖先にあたるのか、カブトガニに近い生物なのか、諸説はあれどウミサソリというグループがオルドビス紀に生まれ、シルル紀に最盛期をむかえた。
うみさそり、ウミサソリ、海蠍、文字だけで想像をかきたてる生物であるが、想像以上に大きい種もいる。
・アクチラムス / Acutiramus macrophthalmus
驚くことに、実物である。
普通のサソリというと手のひらに乗るようなものばかりだが、アクチラムスは2.2メートル。一般的なベッドの縦が約2メートルなので、そのサイズのサソリかと考えると怪物っぷりがイメージできるであろう。水中だからこその巨大化とはいえ、節足動物最大級である。
化石標本の隣に、ウミサソリが板皮魚ダンクルオステウスに襲われている模型がある。ダンクルオステウスが巨大なのでアクチラムスが霞んでしまいそうだが、是非ともアクチラムスだけみてサイズを体感して欲しい。
脊椎動物以外のことばかり書いてしまっていた。
脊椎動物に戻ろう。
センターサークル近くには、哺乳類も属している単弓類の展示が多い。
常設展に全身が展示してあったディメトロドン。
盤竜類のイノストランケビアやコティロリンクス。関東では佐野市葛生化石館でないとお目にかかれない2体であったので、上野で再会できて嬉しい。
・ディメトロドン頭骨/ Dimetrodon
・イノストランケビア / Inostrancevia
・コティロリンクス / Cotylorhynchus
・コティロリンクス頭骨(レプリカだが日本に1つしかない) / Cotylorhynchus
私としては予想外であったが、恐竜の全身骨格も展示されていた。
全身骨格で4点は、普段の科博で見られないものが揃っている。恐竜や哺乳類に関しては別途機会を設けたいくらいである。
・ドロマエオサウルス / Dromaeosaurus albertensis
・カスモサウルス / Chasmosaurus belli
人類の祖先と大々的に発表されたものの、現在では概ね否定されているキツネザルに近いアダピス類の〝イーダ〟ことダーウィニウス・マシラエ。
古生物に関するニュースでは非常に大規模な発表の出来事であり、目の前に実物が展示されているのは不思議な気持ちにもなった。
・ダーウィニウス・マシラエ / Darwinius masillae
プレス・内覧会のあとは、立食パーティー型のレセプションに参加。
図録も頂き、実に美味しい取材であった。
『メガ恐竜展2015』、先行展示 [恐竜・古生物]
夏は恐竜展の季節であり、当ブログも更新が再開します。
みなさま、今夏もよろしくお願い致します。
私はさいたま市在住のため関東の恐竜展が中心となるが、
今年は大きなものとして幕張メッセの『メガ恐竜展』、
パシフィコ横浜の恐竜展『ダイノワールド2015』、
科博こと国立科学博物館の特別展『生命大躍進』など開催される。
他にも映画『ジュラシック・ワールド』が8月に公開予定であり、今から楽しみでならない。
さて、今回は最初に触れた『メガ恐竜展 ―巨大化の謎にせまる―』の1日限定先行展示を見学したときの話をしよう。
2週間ほど前の、6月7日(月)東京駅近くにある丸ビル1Fマルキューブのことである。
トゥリアサウルスの復元骨格(半身)展示だけでなく、監修であるマーティン。サンダー氏などによるプレス(記者会見)が行われた。
私は時間の都合がつかずプレスには参加できなかったが、ゆるキャラねば~るくんも登場したようで盛り上がったようである。
http://mega2015.jp/blog/date/2015/06/10
プレス終了後も日付変更までは展示されているようで、夜な夜な丸ビルへおもむくことに。
23時というのは人通りも少なくなる時間帯。
京浜東北線を降り、駅前から丸ビルへ向かうにつれて人とすれ違うペースは落ちていき、トゥリアサウルスと対面するころには1対1となっていた。
1つ1つは明るくも数の少ない夜間用照明を浴びたトゥリアサウルスを独占、一人ナイトミュージアムである。
おそらく本番の幕張ですら味わえない贅沢をした。
今回の先行展示、組立作業の模様が読売KODOMO新聞に掲載される予定とのこと。
普段は復元骨格の組立現場を観る機会は少ないと思うので、誌面をチェックしてから幕張で本物のトゥリアサウルスを拝むと、違った見え方ができるかもしれない。
声を大にするとわざとらしくなるので、かるくアピール。私も組立に携わった。
なので妙に愛着がわいてきているトゥリアサウルスちゃん。
『くらべてびっくり恐竜展』、板橋区立教育科学館 [恐竜・古生物]
カメレオンも飼育している科学館!!
ということで、絶滅種でなく生きた爬虫類を何種類も見られる東京都の板橋区立教育科学館へ。
2014年7月31日から8月31日まで『くらべてびっくり恐竜展』が開催されており、会期2日目である8月1日、さっそく訪問。
正面玄関から入ると、図鑑の拡大コピーがいくつも視界に飛び込んでくる。天井から釣り下げたり、壁に貼られていたり。
枚数も多いので、展示の説明としてというより恐竜の説明として強く力を発揮している。
図録ではなく市販の図鑑を使う恐竜展というのは珍しいが、不思議と味がある。
まず板橋区立教育科学館は常設展として、トリケラトプスの頭骨やエドモントサウルスの脚骨の実骨などが展示されている。
様々な恐竜展や博物館で見掛けることの多い2種であるが、近距離でじっくり見られるというのが利点である。
また2階にもレプリカながら、アルバートサウルスの前肢やティラノサウルス・テリジノサウルスの爪、トリケラトプス・カマラサウルス・トロオドンの歯など、普段から「くらべる」ことのできる展示がしてある。
常設されているトリケラトプスの頭骨と比べるようにして展示されているのが、ティラノサウルスの頭骨。ティラノサウルスのなかでは一番目にすることが多いであろうSTAN(BHI 3033)標本である。
頭骨の横には「STANってなんだ?」思われる人のため、STANの説明や特徴が色々と書かれた説明ボードが設置してある。下顎の穴や、病理の跡など、写真つきの解説。
ティラノサウルスは頭骨だけではなく、もう1つの「くらべてびっくり」として40本以上にも及ぶ歯がならべて展示してある。1本単品だけでは伝わってこない、生える位置による太さや長さなどの違いなどを比較することができる。
さて、ティラノサウルスの歯の写真でもピンときた方もいるであろうが、
今回の恐竜展では展示物をガラスではなくアクリル板で囲っている。
反射が激しく、傷も目立ち、あまり写真撮影には向いてはいない。今後の写真も、その点をご了承いただきたい。
・ケラトサルウス(とアロサウルス)の頭骨
・タニコラグレウスとラプトレックスの頭骨(頭骨と推定全長の比較)
・ステゴケラスとプシッタコサウルスの頭骨
・プシッタコサウルスの全身
・ヴェロキラプトルの爪
・ディメトロドン(双弓類)とリストロサウルス(単弓類)
ブログに載せた写真は、展示されているものの一部である。
様々な恐竜展や博物館へ行っている人からすると、珍品はあまりなく、見たことあるものも多い板橋区立教育科学館の恐竜展であるだろう。
会場そのものは大きくはなくても、常設展を含めると点数はなかなかである。
実骨や大物の数は少なくとも、獣脚類の頭骨や爪など「かっこいい!」と言われる人気の高いものが多い。
今回の展示物は、富田京一さんが所長を務める肉食爬虫類研究所やパレオサイエンス社の所蔵品が多く、設営も大きく携わっている。
またティラノサウルスの歯一式は恐竜辞典のイラストなどをなさっている伊藤恵夫さんのものであるなど、個人の協力によって支えられているところもある。
大きな展示ホールで開催されるのとは違い、特別な恐竜みやげもない商業的な要素の薄い恐竜展。田舎や郊外というわけではない都心の住宅街という土地に建てられた区立の科学館がみせた、夏休み期間中の穏やかじゃない力作であろう。
ヨコハマ恐竜展2014が遠く、哺乳類より恐竜がいいというお子様がいる家庭は、「せっかく無料で見られるのだから」と気軽に足を運んでいただきたい。
『ヨコハマ恐竜展2014 ~新説・恐竜の成長~』、内覧会。 [恐竜・古生物]
本日2014年7月16日から8月28日まで『ヨコハマ恐竜展2014 ~新説・恐竜の成長~』が始まった。
同会場パシフィコ横浜では、一昨年『ヨコハマ恐竜展2012 ~福井恐竜博物館コレクション~』を行い、昨年は恐竜ではなく『特別展マンモスYUKA』が開催されていた。
今年は再び恐竜ということになり、モンタナ州立大学付属ロッキー博物館のご協力のもと、恐竜の成長を主軸とした恐竜展が開催される
私は昨日、恐竜おもちゃの博物館 館長のご厚意により内覧会へ参加。
17時から開会式が行われ実行委員長の挨拶のあと、監修者であるジャック・ホーナー氏による20分程度の講演が行われた。
・ホーナー氏の古生物学者としての始まり
・子育て恐竜を発掘できたのは幸運であった(マイアサウラ)
・恐竜が科学的に注目されはじめたのは、鳥の祖先とわかってから
・恐竜が鳥のように子育てするなら、大人が子供を、子供が大人を見た目で判別できる能力はある
・今まで別種とされていた恐竜のいくつかは、成長段階の違いだったかもしれない
・よって今回の展示は、恐竜の成長をメインに展示した
上記のような流れであった。
通訳がいたとはいえ、実に日本人向けのゆっくりした英語で講演してくれて、私のような英語が不得手な人間でも十分に聞き取れた。講演の間に挟まれるちょっとした英語の小話で笑ってしまったのは、間違いなく初である。
さて、今回は内覧会の模様を紹介する記事である。
諸説について私の意見・見解、または他の学説や主張を挟まず、「ホーナー氏の考え」をお楽しみ頂きたい。
恐竜の成長といえば、2010年にモンタナ州立大学の研究グループによる「トロサウルス=成長したトリケラトプス」という同属説の発表が恐竜ファンの間を飛び交ったのがご存じだろうか。
一部では「トリケラトプスの名前が消える!?」と書かれたweb記事もあったが、命名の先取権によりトリケラトプスが優先され、仮に名前が消えるのならばトロサウルスである。
現状あくまで一説であり、大きな支持を得ているわけではない。けれど一説が支持され固められ、通説になっていくこともある。
そして今回の恐竜展、最初に展示されているのはトリケラトプスの成長である。
ホーナー氏の講演のあとは、彼の解説付きで展示を観覧する時間となった。
「トリケラトプスの子供は多く発見されているのに、トロサウルスの幼体は誰もみたことがないのです」
という説明のもと、成長段階ごとにならんだトリケラトプス7つの頭骨。
一般的な博物館ではトリケラトプスが展示されているとしても1体であり、頭骨だけとはいえ成長段階ごとに見られるのはなかなかない。年を重ねるごとに角の反り返りは緩くなり、フリルの先(縁後頭骨)が丸くなっていくのがわかる。
このあとカモハシ竜ヒパクロサウルスを挟み、堅頭竜パキケファロサウルス。
学名表記が『Pachycephalosaurus』であり、英語圏では「パキケフォロサウルス」と発音するためか、通訳の方がつられて「パキケフォロサウルス」と何度も口にしていた。恐竜あるあるの定番であろう。
先ほどの「子供トリケラトプス→トリケラトプス→トロサウルス」という成長段階に対し、
今回は「ドラコレックス→スティゴモロク→パキケファロサウルス」と成長していったという発想の展示である。
(内覧会での写真がブレていたため、代用として2011年に別の会場で撮影したものを1枚使用)
ご覧の通り、ドラコレックスやスティゴモロクは後頭部に2本の大きな角がある。疑問に思って当然である。角に関しては(ホーナー氏が書いたものではないが)現生のチョウザメを使って説明した論文があるので参考にして欲しいとのこと。
締めくくりは、ティラノサウルス。
かつてはナノティラノスと呼ばれていた小型ティラノサウルスや、最大級とされるMOR.008標本など合計4つの頭骨が展示されている。
MOR.008は頭骨の部分化石しか発掘されていないがスーよりも大きく、スーやMOR.008 のような成長した大型は骨ごと食べるスカベンジャー(腐肉食)であるとホーナー氏は説明した。
・愛称B-レックスと幼体ティラノサウルス・レックス(ナノティラヌス)
・MOR.008
・MOR.555(ワンケル)
ティラノサウルス全身骨格はMOR.555標本がベースである。
MOR.555の頭骨は、下顎を除いた頭骨の上半分がほとんど見つかっている素晴らしい頭骨といえよう。鼻骨から口の尖端にかけても発見されていないので、そこを含めて判別できるように頭骨レプリカは作られている。
メイン展示の最後は、ティラノサウルスの可動式復元。
例え体長が骨格と同等であろうと、肉がつくとより巨大に見える。復元ロボットを見ながら、ホーナー氏はおっしゃった。
「前肢がとても小さいでしょう? これは大して役に立たなかったんだ。もしティラノサウルスが絶滅せずあと100万年生きていたら、この前肢はなくなっていたかもね」と。
メイン展示が終わってみると、会場スペースの割に実骨や小物の展示はいささか少ない。言い換えれば空間を贅沢につかった大物が多く、視覚的に圧倒される。
また、ティラノサウルスに限らず今回はロボットが多い。メイン展示のあとも恐竜をつかった遊具もあり、アミューズメント要素が高い恐竜展となっているといえよう。2つの視点からみると、お子様が飽きにくいようになっているのではなかろうか。
さて、最後まで読んだ頂いた方々のなかに、このように疑問を思った方がいるだろう。
「福井恐竜博物館の2011年夏にあった特別展と一緒じゃ?」
「大阪市立自然史博物館で2012年春にもあったよね?」
まさにその通りである。巡回展と思っていただきたい。
3年前の福井となると私も少し記憶が曖昧になり展示物すべてを明確に覚えてはいないが、諸説を後押しするような骨追加らしい追加の骨格標本はないはずである。大阪のときにあったヒパクロサウルスの全身骨格も今回はない。
「福井から3年、大阪からも2年も経ったし、もう一度みてみたい」という方は是非とも足を運んでいただいて頂きたい。
国立科学博物館、『太古の哺乳類展』プレス・内覧会。 [恐竜・古生物]
目玉はナウマンゾウの親子3体。
「日本を代表する絶滅哺乳類といえば彼らしかいない!」、というのも納得である。
知名度もあれば、発掘された量も多い。日本各地で見つかっている。
ホール中央に展示されている3体は、もちろん父・母・子のように展示されているだけであり、実際の親子ではない。現生のアフリカゾウは、父親が子供と一緒に長く行動することもない。
だが、この3匹は間違いなく日本を歩いていた。注目すべきは発掘場所である。
東京都中央区の浜町駅で発掘された、母ナウマン(左)。
千葉県藤沢市や下総町そして渋谷区で発掘された牙を組み合わせてつくられた、父ナウマン(右)。
ちょっと離れて北九州市で発掘された、子ナウマンの頭骨(中央)。
他にも上野からすぐ近くである、台東区稲荷町で見つかった大きな牙なども展示されている。
さて、目玉を先に紹介したが「なんの話だ?」と思われた方もいるかもしれない。
本日2014年7月12日から10月5日まで国立科学博物館(通称:科博)にて開催されている『太古の哺乳類展 –日本の化石でたどる進化と絶滅-』。その前日プレス・内覧会について紹介しよう。
開会式の模様と、サポーターである山田五郎氏の就任式。大腿骨の授与。
山田五郎氏の右側は、監修者である富田幸光先生(国立科学博物館 地学研究部長)である。
富田氏の長年に渡るの功績と人望により、全国津々浦々の博物館から哺乳類たちが集結している。日本から発掘された化石たちばかりで行われる大規模な絶滅哺乳類展というのは、今回が初であろう。
デスモスチルスやパレオパラドキシアといった束柱類の話もしたいが、
惜しいけれど次回にしよう。
さきほどナウマンゾウの話をしたので、引き続きゾウ類のことを。
ナウマンゾウは絶滅ゾウのなかでも、わりと最近まで生存していた。
約2万年前の氷期ピーク頃から絶滅に踏み出していると考えられている。たしかにこれでは、太古という言葉を使うには新しい気がしてしまう。
ゾウの中でも古い地層から発見された、ゴンフォテリウムの話をしよう。
ナウマンゾウやケナガマンモスと比べて知名度は劣るであろうが、『海洋堂特製フィギュアストラップ ガチャガチャ』の4属のうちの1つに選ばれている。
ゴンフォテリウム科は(諸説あれど)2000万年前に誕生したと考えられている。
その中で今回展示されているゴンフォテリウム・アネクテンスは岐阜県可児市で発見されたもの。
ナウマンゾウや現生ゾウと比べて、あごが大きく突き出しているのがわかるだろう。牙も上の歯だけでなく下顎の尖端からも生えている。太古のゾウ類にはゴンフォテリウムの他にプラティベロドンなど下顎が出ているものも多く、ゾウはゾウでも現生のイメージとは随分と姿形が違うもの。
ゴンフォテリウムは頭骨のレプリカが、科博の未来館に常設展示されている。
『太古の哺乳類展』にある部分頭骨(上顎)と下顎は、実骨である。しかも上と下は同一個体のものと考えられている。
しかし上下がセットとなって同時に発見されたというわけではない。
上顎が1913年、下顎が1924年に発見されている(詳細な資料ではないので正確な年数ではないかもしれないのでご了承ください)。
発掘現場が同じであり、歯の磨り減り具合も近いことから、同一個体である可能性が高い。
又、時期や発見者が違うので、保存されている機関も異なっている。
上顎が瑞浪市化石博物館、下顎が京都大学総合博物館の所蔵。長いこと離ればなれであった。
今回の展覧会により、上と下の歯が一緒になるのはおそらく50年以上ぶり。さぞ再会を噛みしめ合っただろう。
展示されているゴンフォテリウムの化石はもろいため、哺乳類展のあと上下の実骨が一緒に見られるのは、今後もうないかもしれない。贅沢な再会を見所の1つとして、是非とも『太古の哺乳類展』を楽しんで頂きたい。
今回はゾウが中心となったが、
他にも見所として、さきほど少しだけ話題にした束柱類や、日本で発見されたトラの頭骨化石などがある。
今を逃すとまた全国各地の家に戻ってしまいので、集約している今こそ「太古の日本を闊歩していた陸上哺乳類」を体感して頂きたい。
・おまけ
古生物を中心とした造形作家である徳川広和さんと、今回展示されている作品。
この他にも徳川さんがお造りになったザイサンアミノドンには奥歯もあるので、是非とも下から覗き込んで見て欲しい。
そのザイサンアミノドンを徳川さんだけでなく、ヒサ先生や真鍋先生らが囲むというレアショット。
恐竜でなく哺乳類をというのが、レアリティが増して面白い。
お土産コーナーには徳川さんが造形を手がけたFavorite社の新作フィギュア、ケナガマンモスとスミロドンも販売しています。ケナガマンモスの足を裏側からみると、前後で形が違うのがポイント。
http://www.f-favorite.net/SHOP/982789/982796/list.html